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2022年12月13日

「ケンチク」モノローグ Vol.4

「縮み」志向、マイクロ・ハウジングについて

11月2日にアメリカ、アウバーン大学でZOOMレクチャーを行いました。タイトルは「日本のマイクロ・ハウジングについて」です。博士論文でアメリカのミックスト・インカム住宅の調査・分析を行った延長に、日本のマイクロ・ハウジングに行きつきました。マイクロ・ハウジングとはいわゆる都市型の狭小住宅です。日本の場合、専有面積が10㎡くらいの三畳ワンルームを指します。都市部では経済性、利便性などから住宅の縮小化が進んでいます。

その縮小化に関連して、興味深い本があります。李御寧著の『「縮み」志向の日本人』(講談社学術文庫)です。日本人は小さいものをみて「かわいい」と感じます。李氏は著書の中で、その感性が1000年以上前の平安時代の作家、清少納言の随筆「枕草子」の中にもすでに日本のかわいい感が見て取れるというのです。枕草子の「うつくしきもの」の一文に「何も何も、小さきものは、みなうつくし」とあります。「うつくし」とは「かわいい」の意味。列挙される小さきものに「うつくし」という言葉があてがわれています。文学以外にも俳句、盆栽、折り詰め弁当など、昔から日本人に愛され続けてきた文化も引用し、それらの中にも日本人の小さいものへの愛情が見てとれると著しています。空間においても縮小することにより、その神髄を極めていったものがあります。茶の湯で客人をもてなす場、茶室です。茶室においても千利休の時代に極限の広さ一畳台目(一畳半)にまで縮小されました。これら日本人の縮小化への思いは、ほかの国には見られない日本独特の感性といえます。

「縮み」志向に加え、 かつての日本型雇用システム(終身雇用や年功序列等)が終わり、非正規雇用の割合の高まりやギグワークの台頭など多様化する働き方が社会に徐々に浸透しています。 また、集団から個を重視する社会の風潮に変わってきたことで、人々、特に若者は「自分らしさ」を大切にし始めました。単身であること、ジェンダーレス、エイジレスなど、今までの社会通念の枠を超えた新しい価値観やライフスタイルが生まれています。この新しいライフスタイルが住宅のマイクロ化を促進しています。マイクロ化により住戸の間取りや共有スペースなどが狭小化しても、住人たちは前向きにその空間を受け入れています。

image単身者の住まい

先ほどの「枕草子」と並んで古典日本三大随筆の一つ「方丈記」を書いた鴨長明は、晩年「方丈庵」という1丈(3.03メートル) 四方の小さな庵で生活し方丈記を執筆しました。この簡素な4畳半くらいの狭い空間から、無常観や思いのままに生きることをうたった方丈記が生み出されたことは、住居のマイクロ化を考えたときに、ライフスタイルを重視する今の社会にも通ずるものがあり、とても興味深く感じます。そして、この方丈という広さはいつの時代にも通ずる普遍的な広さだと感じます。そのため、平安時代から続く方丈規模の住居空間をこれからの住宅のプロトタイプとして、マイクロ・ハウジングのあり方や可能性に注目していくつもりです。

続きはまた改めて書きます・・・


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